概要
以前紹介した、たのしい水彩の時間、やさしい水彩の時間と同じ、あべまりえ先生の著書です。
著者のウェブサイトのギャラリーは「水彩画」、「水彩イラスト」、「時短スケッチ」の3つに分かれています。こちらの本はその中の「時短スケッチ」についての本になります。
この本はペーパーバックと kindle 版があります。ページ数は kindle 版で122ページです。フルカラーで、鮮やかで明るくやさしい雰囲気のスケッチがたくさん掲載されています。
構成は、3つの章に分かれており、それぞれ、時短スケッチ練習、スケッチの構成、おみやげのアイデアとタイトルが付けられています。そのほか、第1章の前に、「はじめに」と「旅の準備」が、第3章の後に「おわりに」があります。
「はじめに」と「旅の準備」
「はじめに」では「時短スケッチ」をおすすめする理由が述べられています。
「旅の準備」では道具が紹介されています。
まずは絵具セット。Winsor & Newton のフィールドボックスセット の写真が載っています。
その写真の下に色選びのすすめとして、市販の携帯絵具セットそのままではなく、同じメーカーの固形水彩絵具を買い足して入れ替えることをすすめています。
筆は水筆をすすめています。コラムにもあるのですが、小サイズではなく、中サイズか大サイズを推奨しています。
ペンはピグマペンの太さ 0.1 〜 0.2 mm を使っており、そのほかに白インクのペンも紹介しています。
スケッチブックはよほどの紙質でない限り問題ないとしています。スケッチブック意外にもクロッキー帳やハガキサイズの紙も持参することをすすめています。
そのほか、敷物、カメラ、ティッシュ、鉛筆と消しゴム、水入れを持ち歩くそうです。
Chapter. 1
Chapter. 1 は時短スケッチ練習というタイトルです。旅に行く前のウォーミングアップスケッチ、身近なものとしての絵具セットのスケッチ、野の花のスケッチ、近景のスケッチ、遠景のスケッチ、道のある風景のスケッチとステップアップしていきます。
元となる写真が載っていること、手順を細かく分けて写真入りで示していること、塗る順番や簡略化の仕方などのアドバイスが丁寧なことなどから、これなら描けそうという気持ちにさせてくれます。水筆の使い方のコツやグレーの混色の仕方が載っているのもありがたいです。
Chapter. 2
Chapter. 2 はスケッチの構成についてです。ワンシーンを描く、見開きページで描く、モチーフを並べて描く、モチーフを合成して描く、囲まれた構図を探して描くという順で紹介されています。さらに、スケッチブックを画集のようにまとめることを提案しています。
Chapter. 3
Chapter. 3 はおみやげのアイデアです。描いた絵を印刷してカードにしたり、おみやげ入れに貼ったり、ポストカードセットを作ったりしてプレゼントすることを提案しています。また、原画の額装、ミニブック作りについても載っています。
全体を通して
全体を通して、著者の時短スケッチが豊富に載っています。数が多い分ひとつひとつは小さいですが、色が鮮やかで明るく透明感があってとても素敵です。
また、節の間に travel sketchbook として、これまでに著者が描いたスケッチブックの写真が載っています。飛行機の中、薔薇が咲くフランスの小さな村、島根県の小さな町、フィレンツェ、イタリアの小さな村で描かれたスケッチはどれも雰囲気があって素敵です。
さらに、Advice として、スケッチに役立つアドバイスが載っています。絵具の持って行きかた、グレーの作り方、茂みや木の描き方、水筆の扱い方、水筆でできること、スケッチブック以外を効率的に使う、画面構成のヒント、囲まれた構図についてのアドバイスがありました。
どれもなるほどと思うものばかりですが、特に、スケッチブック以外を効率的に使うのはまねしたいと思いました。スケッチブックは絵具が乾くまで次のページを使えないので、ハガキサイズの紙を持って行って乾くまでの間それに描く、クロッキー帳を持って行ってそれに絵を描いたりメモを書いたりする。スケッチ旅行の経験がないとなかなか気がつかないことだと思いました。
著者のパレット(推測含む)
ところで、私はスケッチを始めようと思った時、どの色を選ぶか本当に迷いました。今でも迷っています。こちらの本では使っている色についてテキストでは触れていません。ですが、道具のスケッチに色名の記載がありました。
著者は下記の14色を持ち歩いているようです。メーカーとシリーズは、おそらく Winsor & Newton のプロフェッショナルだと思われるので、そう仮定して絵具の特性も記載してみました。
- フレンチウルトラマリン(PB29 粒状化 透明)
- イエローオーカー(PY43 半不透明)
- バーントシェンナ(PR101 透明)
- バーントアンバー(PBr7 PR101 PY42 透明)
- ウィンザーバイオレット(PV23 染色性 透明)
- サップグリーン(PG36 PY110 染色性 透明)
- ウィンザーグリーン(ブルーシェード?)(PG7 染色性 透明)
- マンガニーズブルーヒュー(PB15 粒状化 半不透明)
- コバルトブルー(PB28 粒状化 半透明)
- ネイプルスイエロー(PW6 PBr24 不透明)
- カドミウムイエローペール(PY35 染色性 不透明)
- ウィンザーオレンジ(PO62 半不透明)
- カドミウムレッドディープ(PR108 粒状化 不透明)
- オペラローズ(PR122+fluorescent 半透明)
個人的には不透明色が少ない印象を受けて、著者のスケッチの透明感と矛盾しないなと感じました。そして、14色中4色が粒状化色。私は粒状化色を使うことに苦手感があるのですが、技術とセンスがある方が使うとスケッチに雰囲気がでてよいなぁと思いました。
感想
というわけで、スケッチ初心者にとって、すみからすみまで参考になる本でした。旅の時短スケッチについての本ですが、旅に限らずアーバンスケッチの参考になると思います。著者の画風が好きな方、水彩スケッチを始めたい初心者の方におすすめの本です。
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