ブックレビュー:建物&街角スケッチパース

建物&街角スケッチパース
マシュー・ブレーム

汽車の車内を描いてみたときに、自分の立ち位置は変わらないで視点だけが変わった場合に消失点はどうなるんだろうと疑問に思いました。そこでパースについての本を読んでみようと思いました。

この本を選んだのはこの本の原著についてのレビューを見て、以前から興味を持っていたからです。

この本はパースについてとてもわかりやすく説明してあり勉強になりましたし、当初の疑問も解決しました。アーバンスケッチを始めようとする人にとてもおすすめの本です。

ブックレビュー

概要

この本の著者マシュー・ブレーム(Matthew Brehm)氏は、アイダホ大学建築&インテリアデザイン学部の助教授です。

この本の原著は「Drawing Perspective: How to See It and How to Apply It」で、2016年3月に出版されました。日本語版は2016年に9月にマール社から出版されました。原著も日本語版も Kindle 版はありません。

この本の大きさは 25.5 x 21.6 cm とふつうのB5版より横に長い大きさです。ページ数は 144 ページです。構成は6つの章に分かれており、第1章の前に遠近法の歴史と遠近法の基礎のページがあります。第6章はワークブックです。第6章以外の章は、観察する、仕組みを理解する、応用する、描き方と描く順番の4つに分かれています。

第1章のまえに

最初に遠近法の歴史と遠近法の基礎についての説明が4ページずつあります。遠近法の基礎では奥行き感を出す方法、線の収束、消失点、水平線、目の高さ、視線と視円錐、スケッチをするときの目測法が説明されています。

第1章

第1章のタイトルは一点透視図法です。たくさんの写真とスケッチで一点透視図法について説明しています。この本全体を通して水平線は黒、収束線は赤、視線と直角に交わる線は青で書いてあります。写真やスケッチにこの線が書き込まれているのでとてもわかりやすいです。

同じ幅の繰り返しを描く方法も紹介されています。

描き方と描く順番の節では、ペンとマーカーを使って複雑な構成のものを一点透視図法で描く手順を、細かいステップに分けて写真と文章で描き方を説明しています。大きさの目測方法も勉強になりますし、覚え描きに消失点と視点の位置、視線の方向を描いておくということもとても参考になりました。

第2章

第2章は二点透視図法です。第1章と同様に豊富な写真とスケッチで二点透視図法を説明しています。エスカレータを正面から見た図など斜面が増えることで消失点がひとつ増えた図も二点透視図として紹介しています。描き方と描く順番では鉛筆を使った二点透視図法のデッサンについてです。

第3章

第3章は三点透視図法です。描き方と描く順番では鉛筆と透明水彩を使って三点透視図法を用いたスケッチを作成していく手順について細かく説明しています。覚え描きの小さなスケッチに収束線とすべての消失点を描いておく、真上から見下ろした配置図を作り、建物の配置やスケッチをする人の視線の方向を描いておくことなどが、個人的にはおもしろいと思いました。

第4章

第4章は多点透視図法です。これは碁盤の目状に並んではいない対象や空間を二次元として描く技法です。これまでの章と同様にたくさんのすばらしいスケッチで学ぶことができます。賑やかな広場のスケッチの例で描き方と描く順番が説明されています。

第5章

第5章は曲線遠近法です。これは周辺視野含めた広い範囲を二次元として描く技法です。横に長い壁を見る時、真正面から中央を見ているとそこに消失点のある一点透視図になります。右端を見ると最初の消失点と右端の視線の先の2箇所に消失点を持つ二点透視図になります。左端でも同様です。これをひとつの図にまとめると、視心を消失点とする一点透視図法と水平線状の左右の2つの消失点に湾曲しながら収束する曲線遠近法の二点透視図法が合体したものになります。文章で表現すると難しいかもしれませんが、この本のイラストはとてもわかりやすいです。

描き方と描く順番はケーブルカーの発着駅の精密な油彩画が例に挙げられていますが、大作すぎてちょっと参考にはできないかなと思いました。

第6章

第6章はワークブックです。一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法、曲線遠近法、極端な曲線遠近法の書き込み用のパースグリッドです。なお、このグリッドはマール社のウェブサイトからダウンロードできます。

全体を通して

繰り返しになってしまいますが、写真やスケッチに収束線や水平線などが書き込まれていて、透視図法の理解を助けてくれます。写真やスケッチが豊富で実際にどのように応用すればよいかのイメージもつかみやすいです。文章もわかりやすいです。建築の専門用語らしきもの(ペディメント、ロッジア、バットレス)がでてきますがたいてい説明がついています。そして、多点透視図法、曲線遠近法についてのわかりやすい説明があるのがこの本のよいところだと思います。

おわりに

私の当初の疑問(汽車内を描くときに視点が変わってしまったけれどその時に消失点はどうなるのか)の答えは最初の消失点はそのまま。さらに右に視線をずらしたのでそちらにも消失点を持った曲線遠近法で描けばよかったんですね。実際この本の曲線遠近法の章では旅客機の機内や車内のスケッチが例としてあげられています。とは言ってみたものの曲線遠近法は初心者にはちょっとハードルが高いです。できれば初心者のうちは視円錐の範囲に収まるスケッチで練習を重ねたいと思いました。


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