Freehand Drawing and Discovery: Urban Sketching and Concept Drawing for Designers(日本の Amazon の Kindle 版へのリンクです)
この本を読もうと思ったきっかけはインスタグラムでこの本の中の文章を画像にしたものを見て興味を持ったからです。
読んでみると、タイトルにある通りアーバンデザインに携わる人向けのフリーハンドスケッチについての本でした。私にとっては全くの専門外の本でしたが、フリーハンドスケッチがどのような手順で描かれるのかを知ることができてためになりました。また、アーバンスケッチについての記載もあり勉強になりました。なによりスケッチが美しくとても楽しく読めました。
レビュー
概要
著者の James Richards さんはアーティスト、アーバンデザイナー、教育者であり、design and drawing の分野の元教授という人物です。アーバンスケッチャーズの顧問委員会のメンバーでもあります。
この本はハードカバー版と Kindle 版、Kindle Edition with Audio/Video 版がでています。とは言っても enhanced e-book 版の映像は出版社のウェブページで視聴する形です。アドレスさえ知っていれば誰でもみることができるので、わざわざ映像データ付きのものを買う必要もないかと思います。
言語は英語です。なお、著者のインスタグラムでは中国語版、ロシア語版、韓国語版のこの本が紹介されています。
ページ数は290ページとかなりのボリュームです。
構成は3つのパートに分かれており、各パート2から4の章から成っています。章の数は合計9つです。パート1はスケッチの基本について、パート2はアーバンスケッチについて、パート3はコンセプトスケッチについての各論です。
また、章の間にスケッチャーの紹介コーナーがあります。
パート1
パート1は4つの章からなります。
第1章ではデジタル時代にハンドスケッチをする理由について述べられています。
第2章では9つのキーが紹介されます。道具はシンプルに、描くことに挑戦する、最初にひとを描く、暗い部分を上手に使うなどです。著者がフリーハンドスケッチで使用している道具についての紹介もあります。
第3章はひと、乗り物、木、岩、水、備品、空、建物の描き方が紹介されています。木の描き方は動画があります。
第4章はパースについてです。一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法について簡単に紹介されています。また、前景、中景、背景についての説明があります。
パート2
パート2はアーバンスケッチについてで2つの章に分かれています。
第5章はアーバンスケッチについての説明と著者にとって創作の糧となっていることが述べられています。
第6章は著者がアーバンスケッチに使用している道具の紹介、何を描くか、色を塗るか否かなどについて書かれています。ここでは細かいステップにわけてどのようにスケッチをしているのかが紹介されています。
パート3
パート3はコンセプトスケッチについてで、3つの章に分かれています。
第7章では空中写真からのスケッチ、デジタル写真からのスケッチ、グーグルアースからのスケッチ、スケッチアップ(3次元モデリングソフト)からのスケッチが細かいステップにわけて説明されています。
第8章はデジタルツールを使ったコンセプトスケッチについて、こちらも丁寧に説明されています。
第9章はまとめで、よい友人を作ろう、旅をしようなどのアドバイスがありました。
おわりに
先に述べましたが、コンセプトデザイン用のフリーハンドスケッチという自分の専門外の本ではありましたが、とても楽しく読むことができました。そして、この本の本筋ではないと思いますが、スケッチにひとを描き入れることの効果を知りました。大自然でない限りひとの住む空間はひとに合わせて作られているという当たり前のことに気づかされました。この本を読んで、いままで苦手にしていたひとを描き入れることに挑戦してみようと思いました。
この本はアメリカではアーバンデザインなどを学ぶ学生の間で教科書として読まれているようです。その分野の学生さんは読んでみるとよいのではないでしょうか。中国語やロシア語や韓国語にも翻訳されているようなので、日本語にも翻訳されればいいのになと思いました。ただし、出版されたのが 2013 年です。デジタルツールについては情報が古いかもしれません。
アーバンデザインに興味がない人でもアーバンスケッチの参考になるので読んでみて損はないと思います。
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