ブックレビュー:絵具の科学

絵具の科学〔改訂新版〕中央公論美術出版

水彩ってなんだろうと思ったときに、答えがありそうと思って買ってみました。読んでみると、主に油絵具について書かれている本でした。もちろん水彩についても書いてありますし、絵具全般についての知識が得られてとても勉強になる本です。

この本は1990年に出版された同名の本の増補改訂版で、2018年12月に出版されました。タイトル通り、絵具や材料について科学者の視点から書かれた本です。

形式はソフトカバーの単行本で、205ページあります。本編は5章に分かれていますが、第1章の前に「本書を読むにあたって」と序章があります。

最初の「本書を読むにあたって」では、まず絵具の歴史について簡単に紹介があり、チューブが発明されてから絵の具の形状や使用法がめざましく変化した現在だからこそ、絵を描くにあたって絵具を化学的に認識しおくことが重要と述べられています。そして、5つの節で、絵の具の性格、発色、光沢、乾燥、基底材への固着の5つの要素についてそれぞれ簡単に説明しています。

序章は絵具の成分についての総論です。

第1章は絵具の成分の各論です。顔料、油性固着材、水性固着材、溶剤、助剤などについて説明しています。顔料についての節は、顔料の一般的性質(色、明度、彩度、耐光性など)についての節と、無機顔料、有機顔料それぞれの分類の節に分かれています。カラーインデックスの紹介もこの章です。

第2章は絵具の製造についてです。油絵具を例として絵具の製造について詳しく述べられています。水彩絵具の製造についてやパンカラーとケーキカラーの違いについても説明されています。

第3章は画用液の種類と使い方についてです。油絵具編、アクリル絵具編、水彩絵具編に分かれています。それぞれいくつかの項に分かれており、水彩絵具編は、分類、水彩紙に使用するもの(サイズ剤)、制作中に使用するもの(アラビアゴム、オックスゴール、マスキング液)、完成後の画面を保護するもの(保護ワニス)に分かれています。また、絵具の透明性と光沢についても述べられており、その中で透明水彩、不透明水彩、ガッシュの違いについての説明があります。

第4章は支持体と下地について、支持体(紙、キャンバスなど)ごとに説明しています。

第5章は絵具使用時における諸問題というタイトルで、色彩の変化、人体への害と予防、作品完成後の問題点についてなどが述べられています。

最初に書いた通り、油絵具を中心に書かれていますが、水彩についての記述もあります。個人的には、水彩の透明性について理解できたのが大きな収穫でした。また、顔料の分類を知ることで絵具の色名を覚えることへの苦手感が少し和らぎました。また、顔料についてもっと知りたくなったので、次は顔料についての本を読んでみようと思いました。

ややマニアックな内容なので、科学的に絵具を知りたい方にのみおすすめしたい本です。

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