顔料に興味が出てきてなにか本を読んでみようと思い、2017年3月発行と比較的新しいこの本を読んでみました。
読んでみると内容はかなり科学的、工業的でした。そして、絵の具についての記載はほんの少しでした。
この本は多色刷りで285ページです。構成は5つの章にわかれており、それぞれ、色の科学入門、顔料の色、顔料の使われ方、顔料の作られ方、顔料に求められる性能と機能について書かれています。そして、巻末の付録に顔料一覧表があります。
第1章は色とは何か、色はなぜ見えるのかというテーマについて書かれています。図が豊富にあり文章は読みやすいのですが、高校物理レベル以上と思われる式が多数でてきます。
第2章は顔料の色についてです。まず、顔料と染料の違いについて述べられています。染料は溶媒に溶解した後に繊維や紙に分子状態で結合するもので、顔料は粒子が分散しており着色後も粒子状態が維持されているものだそうです。次に顔料の発色機構です。電子遷移についての話でおそらく高校化学の範囲を超えた内容だと思います。顔料の混色についてもこの章で述べられています。そのほか、コンピュータ・カラー・マッチングを用いた顔料の調色についても述べられています。
第3章は顔料がどのように使われているかについてです。印刷インキ、塗料、プラスチックの着色剤、繊維の着色方法である「捺染」と「原液着色法」と続き、文具や筆記具の材料の節で絵の具についての記載があります。絵の具については種類、作り方、求められる性能について書かれていました。そのほかに、酸化チタンの光触媒機能、近赤外線反射機能、機能性色素が紹介されています。
第4章はよく使われる顔料がどのように作られているかの解説です。専門的で難しく、絵の具を使うだけならば必要がない情報だと思います。顔料によっては耐性などの性質が書いてありこれは参考になります。
第5章は顔料に求められる性能と機能についてです。色相、着色力、隠蔽力、各種耐性、分散性といった性能についてと、安全性について述べられています。
全体的に専門的で、化学と物理学の知識が必要とされます。趣味で絵の具を使うための知識をつけたい私のようなひとには過ぎた代物でした。興味があるひとは、図書館などで中身を確認してから購入するかどうか検討するのがよいと思います。
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