水彩を始めるにあたって、そもそも水彩ってなんだろうと疑問に思ったので、その定義と、構成成分について調べてみました。
主な資料は、下記の本です。
絵具の科学〔改訂新版〕中央公論美術出版
Watercolor Artist’s Guide to Exceptional ColorJan Hart
定義
水彩(watercolor)とは水を溶媒とした絵の具の一種です。色を表す発色成分である顔料、顔料を紙に定着させる固着成分としてのアラビアゴム、補助成分から成ります。
ガッシュ(gouache)との違い
ガッシュも水彩と同様に水を溶媒とした絵の具ですが、固着成分の分量が異なります。顔料に対して固着成分の分量が少ないのがガッシュです。乾燥後の表面が粗くなり、 不透明となります。
顔彩との違い
顔彩も水で溶いて使う絵の具です。固着成分に膠を使い、四角い容器に入れて固形化したものが顔彩と呼ばれます。ちなみに丸皿に入ったものは鉄鉢と呼ばれます。
小学校の美術の授業で使った水彩
小学校の美術の授業で使った絵具は不透明だけどガッシュとも異なるものだったと思います。
この小学生用の絵具はマット水彩絵具と呼ばれるものです。体質顔料(溶けると透明になる物体。色の調整などを目的に絵の具に加えられるもの)を増やして、固着成分の量を減らしているため、少なめの水で溶くと不透明水彩のように、多めの水で溶くと透明水彩のようになります。
構成成分
顔料(pigments)
顔料は絵の具に色を与える物質です。水彩の顔料は化学組成によって有機顔料と無機顔料に分けられます。
有機顔料(organic pigments)
有機化合物を主体とする顔料で、明るく、軽く、透明なものが多いのが特徴です。一般的に耐光性は無機顔料に比べ劣ります。
合成有機顔料には、フタロ、キナクリドン、アゾなどがあります。
天然有機顔料にはローズマダージェニュインがあります。
無機顔料(inorganic pigments)
鉱物性顔料とも呼ばれ、鉱物を加工、粉砕してつくるものと、亜鉛、チタン、鉛、鉄、銅、クロムなどの化合物を原料としてつくるものとがあります。
一般的に重たく、透明度は低いです。粒状化するものもあります。
合成無機顔料にはコバルトブルー、マンガニーズバイオレット、カドミウムイエロー、酸化亜鉛(チャイニーズホワイト)などがあります。
天然無機顔料にはアンバーやシェンナなどがあります。
Color Index Number (C.I. No.)
ややこしいことに、同じ名前の絵の具でもメーカーによって含まれる顔料が異なることがあります。どのような名前をつけるかはメーカーにまかされているためです。
上の画像はシュミンケのカタログの一部です(日本語版のデータが見つけられずドイツ語、英語版ですが)。この場合、商品名が lemon yellow、顔料の名前は Monoazo yellow、そして C.I. No. は PY3 です。P は pigment、Y は yellow、番号はこの顔料の登録された順です。
C.I. No. は1つの顔料に1つの番号が割り振られています。なので、C.I. No. がひとつだけ書かれている絵の具は単一顔料の絵の具ということになります。
固着成分
顔料を紙に定着させるものとして、水彩では水溶性樹脂であるアラビアゴムが使われます。
補助成分
水彩絵の具には保湿剤としてグリセリンが使われます。伝統的製法では保湿剤として蜂蜜を含むものもあります。フランスのメーカー、セヌリエの水彩、l’Aquarelle が有名です。
水彩には保湿剤以外にも防腐防カビ剤や界面活性剤などが入っています。
形態
水彩絵の具を買おうと思うと、いくつかの形態があって悩むと思います。水彩絵の具の形態は、チューブに入ったもの、パンカラー、ケーキカラーがあります。
チューブ
絵の具のペーストをそのままチューブ型の容器に充填したものです。もともと水彩絵の具はビンに入れられて売られていました。1841年にチューブが発明され、今のような固く練った水彩絵の具が作られるようになりました。
パンカラー
パンカラーは小さな容器(パン)に入った固形水彩絵の具で、持ち運びに便利です。パンの大きさはメーカーによって多少異なりますが、3種類あり、ホールパン(30mm×12mm)、その半分のハーフパン、さらに小さいクォーターパン(11mm×11mm)があります。製造方法はメーカーによって異なり、通常の絵の具のペーストをパンに入れて乾かしたもの、ペーストを乾燥させてから高い圧力でプレスして製造されるものがあります。
ケーキカラー
固形水彩絵の具の一種で、絵の具の製造段階で水分含有量を極力少なくしておいて、粉末状にした顔料と固着材を混合し、これに少量の湿潤剤を加えて成形したものです。
特徴
透明水彩の特徴についてまとめてみました
- 水で溶けるので油彩と比べてお手軽
- 一度固めたものを水で溶いて使うことができるし、固形水彩も売られている。どちらも持ち運びに便利
- 顔料が疎らなので下地の白が見え透明に明るく見える
- 下の色が透けるので重ね塗りで色を作ることができる
- 水の量を調整することで(白い絵の具を混ぜなくても)濃淡を表現できる
- 水の量をコントロールすることによってにじみやぼかしなどのテクニックが使える
裏を返せば、下手に触ると下に塗った色が動いちゃうことがあるし、色の重ね方や白の残し方を想定しておかないといけないし、水をコントロールする必要があって、実は結構難しい。私はまだまだ勉強中ですが、この手軽さと難しさが水彩の魅力だと思っています。
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